2005年03月01日

おたく展を見てきました

正式には、東京都写真美術館で開催中の「文化庁メディア芸術祭協賛事業/ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展 グローバルメディア2005/おたく:人格=空間=都市」という長い名前の展覧会。要は、昨年イタリアのヴェネチアでやった展示を、日本で再現したということですね。先日、内覧会がありまして、日本館のコミッショナーを務めた森川嘉一郎氏自らによる作品解説付きのギャラリーツアーも行うというので、せっかくなのでそちらにおじゃましました。

コミックマーケット代表の米沢嘉博氏や、韓国の宣政佑(ソン・ジョンウ、선정우)氏も来ていて、それぞれが担当したコミケの展示、おたくのオンライン・コミュニティの展示で、簡単に説明をしていました。

さすがにヴェネチアまでは行かなかったので、実際の展示を見たのは初めてでしたが、萌えフィギュア、おたくの個室、レンタルショーケース、同人誌、コミケのサークル配置、秋葉原の街並み等々、“我々おたく”にとっては見慣れたものばかり(笑)。「私も建築学者である以前に一人のおたく」と明言する森川氏が、「おたくのおたくによる展示」と言う通りの内容で、おたく文化が物珍しいヴェネチアで展示する意義は理解するにせよ、おたく文化があふれている日本でこれをやってどうよ、という気もしましたが、それについては森川氏から興味深い発言がありました。

いわく、「ヴェネチアの展示を恵比寿で再現するのは屈折している。東京ディズニーランドをロサンゼルスに再現するようなもの。山手線に30分も乗れば本物(の秋葉原)がある。そのねじれを感じてもらえれば」云々と。またいわく、「日本は戦後一貫して、欧米から価値観を輸入してモノを輸出してきた。『欧米から評価される』という構図があった。ヴェネチアでも、日本のメディアから『ヨーロッパの人はおたく文化をどう評価しているのか』という質問を何度も何度も受けた。欧米が好む好まないではなく、我々が何を好むのかを提示しなければならない」云々と。

要するに、ヴェネチアからの「帰国展」と銘打って仰々しくやっているこの展示は、“我々おたく”が好む世界を表現したものにほかならない、と。海外からの逆輸入という戦後日本人が無条件にありがたがる形で、日本の社会に対しておたくへの認識を浸透させようとする、ひねくれた(笑)かつ意欲的な試みである、と個人的には理解しました。

なので、おたくを自認する人が見に行っても既視感を覚えるだけかもしれませんが(笑)、森川氏および参加作家の皆さんが、おたくというあり方を世間にどのようにアピールしようとしているかを目の当たりするのには打ってつけの展示だと思います。今月13日までということですので、ご関心のある向きはぜひ足をお運び下さい。

実は、この前書いた押井守氏のトークイベント「Howling in the Night 2005」でも、押井氏から「日本の戦争映画の限界は、(第二次世界大戦の)敗戦の呪縛から逃れられないこと」「戦争で負けただけではなく、価値観の上でも負けた」「(『ローレライ』を監督した)樋口(真嗣)氏らの世代がそこから離れてどういう映画を撮れるか」などの発言がありまして、期せずして「戦後の価値観」について考える機会に相次いで恵まれました。樋口氏の「これまでの日本映画にないものができたと思う」との発言、そして今回のおたく展などを考え併せると、時代はようやく、真の意味で「もはや戦後ではない」段階へ動きつつあるのかなあ、という気もします。

おたく展の後は、同美術館でやはり内覧会をやっていた文化庁メディア芸術祭ものぞいたんですが、いかんせん閉館間近でほとんど時間がなくて、駆け足で会場を一周したぐらいでした。こちらは6日まで。おたく展も含め、また見に行きたいけど、時間取れるかなあ……。

Posted by fuku at 00:24 | otaku | トラックバック (0)
コメント

「フィギュア萌え族(仮)犯行説」問題まとめサイトを作っております、古鳥羽護と申します。
事後ですいませんが、fukuさんの「おたく展を見てきました」にリンクさせていただきました。
問題がある場合は、すいませんが、ご一報下さい。

Posted by: 古鳥羽護 at 2005年03月02日 02:24

どうもはじめまして。リンクについてはトップページにある通り、ご自由にどうぞ。リンクして頂いたページ
http://www.geocities.jp/kotoba_mamoru/d050227nhk.html
にある、NHK教育でこの展覧会を紹介した2月27日の「新日曜美術館」は私も見ました。興味深い内容でしたね。番組での森川氏の発言は、ギャラリーツアーの時の発言と重なる部分も多くありました。

これに関連して(?)、2ちゃんねるの某スレ
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1109180069/
でこの記事への言及があるようですが、
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1109180069/296
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1109180069/305
別に私が森川氏にインタビューしたわけではなく、ギャラリーツアーでの森川氏の発言を紹介しただけですので誤解のなきよう。

それにしても、「フィギュア萌え族(仮)」とか言ってる人にも困ったもんですねえ……。一度きちんと言及したいんですが、別に先輩に当たるから躊躇しているわけではなくて、まとまったものを書く余裕がなかなか取れないだけで。いずれ何か書くかもしれません。

Posted by: fuku at 2005年03月03日 03:03
コメントする












名前、アドレスを登録しますか?