(追記:以下の文章の本文における「男女差」に関する記述については、現在では当を失しているという認識であることを申し添えておきます。経過についてはコメントをご参照下さい。)
この文章では、キャラ萌えで作品を楽しむ男性を「萌えオタ」、同じく女性を「腐女子」と表現して話を進めます。
加野瀬さんやkanryoさんも書いてらっしゃいますが、「蒼穹のファフナー」が腐女子にすごい人気だそうで。「ガンダムSEED」と同じようなもので、そのこと自体をとやかく言う気は毛頭ありません。私だって、単なるプリキュア萌えオタだと言われてしまえばそれまでですから。
ただ、先日の「兄弟」記事への反応や、2ちゃんねるのファフナースレとかを見ていると、萌えオタはキャラへの萌えは萌えとして、その作品自体への突っ込みや駄目出しは普通に行っているのに対して、腐女子は自分の萌えキャラが登場する作品への批判、というか非難めいた言説を、好まない面があるのかなあ、と思ったり。
そう感じたのは、ファフナースレで以下のようなレスを読んだからなんですが。
だからキャラ萌えで何が悪いわけ?総士カコイイし一騎かわいいじゃん。
すぐ感情的になって作戦を台無しにしてしまう一騎を
総士が一生懸命なだめてフォローする様は見ていて恋人同士みたいで
見ていてドキドキするし、鮒はそういう楽しみ方するのが正しいと思う。
種でもアスランはキラのことずっと考えてるし、そういう友情以上な関係が萌えるんでしょ?
自分の価値観に合わないからって否定するのはアニメファンとしてどうかと思う。
こういう、作品自体への批判をキャラ萌えへの批判に直結してしまう考え方っていうのが、どうもよく分からなくて。スレの流れを見ても、誰もキャラ萌えがいけない、と言ってるわけではなくて、作品として見た場合に気付く点をあれこれ言ってるだけだと思うんですけど。
萌えオタとしては、「プリキュアはここが駄目だよね、ここをこうすればもっと良くなるよね、でもほのかはかわいいなあ」という楽しみ方をしてるのであって、「プリキュアは駄目だ」と言われれば「それが何か?」と答えられるぐらいの覚悟があると思うのですが。
ここで想起するのが、森川嘉一郎氏がWebマガジンenで連載した「〈趣味〉の政治学」の第5回「〈おたく〉という概念(後編)」でなした、以下の指摘です。
仮に「アニメマニア」なる人がいるとして、その人はアニメのことを、ダメ「だけど」好き、なのだとすれば、おたくはむしろ、ダメ「だから」好き、なのである。つまりおたくたちは、アニメやゲームそれ自体ではなく、「ダメなものとしてのアニメやゲーム」を愛好しているのである。極論すれば、「ダメなものに入れあげる自分」という自意識を保つことに大きな目的があるのであって、漫画やアニメ、ゲームへの傾倒は、むしろその手段なのである。
この指摘には目からうろこが落ちた、というか蒙を啓かされた心地がしました。私自身、前に書いた「萌えろよ萌えろ」という文章で、子供向けアニメや少女向け小説を志向するおたくのあり方について触れたのですが、まさにこういうことなんですよね。先日の「マリみて」記事で、「はたから見れば恥ずかしいものをこそ志向する『おたく』独特の精神性」と書いたのも、森川氏の指摘にインスパイアされた面は大きいです。
脱線しましたが、私が疑問に思ったのは、腐女子にこの森川氏の指摘が適用できるのかどうか、ということです。当然、「『ダメなものに入れあげる自分』という自意識」は持っていそうな感じはするのですが、それを他人からとやかく言われるのを好まない、っていうだけなんでしょうかね。あるいは、この指摘自体、男性のおたくにしか当てはまらないものなのか。腐女子の皆さんの意見をうかがってみたいところです。
(追記)
さっそく反応が。
>萌えオタにも似たようなのはいくらでもいる
>目立つ奴を取り上げて恣意的な普遍化して自分らを正当化しようなんて
正当化しようとは思ってませんが、確かにおっしゃる通りかもしれません。気を悪くされたのなら申し訳ありません。当然、萌えオタにも頑迷な人はいるでしょうし、腐女子にも寛容な人はいるでしょう。ただ、全体的な傾向性としてはどうかなあ、と。あんまり男女差でうんぬんするのはいかがなものか、とは思いつつも、何か違いがありそうな気がして。
Posted by fuku at 11:53 | otaku | トラックバック (2)ええと、男性からの視点で「腐女子」という言葉を断定的に用いるのはいつも危うさを感じるのですが。とまぁまずぼくはそこでひっかかっちゃうんですけどね。
http://d.hatena.ne.jp/emifuwa/20040731#p1
最近では、この日記で女性オタクが「萌え」と「作品自体の良さ」をちゃんと区別して認識してますよ、腐女子を誤解しないでください、という個人の意見が語られています。これなんかいい参考になるんじゃないでしょうか?
女性オタクを眺めていて常に感じる(また、彼女達も自覚している)のは「腐女子も色んなのが居るんだ」ということですね。部分的な知識に囚われないよう、これは注意したいことです。
Posted by: いずみの at 2004年08月01日 13:04いずみのさま
どうもです。リンク先のご紹介、ありがとうございます。腐女子の矜持、大変参考になりました。
ご指摘のように、「腐女子」として十把一からげにして見るのは危険なことですね。男性の萌えオタにもいろんなのがいますし。紋切り型の書き方は反省してます。
ただ、男性おたくと女性おたくでメンタリティの違いというのはあるのかなあ、と思いまして。でもよく考えてみたら、単なる(一般的に言われる)男女差に還元できてしまうような気がしてきました。う~む。
Posted by: fuku at 2004年08月01日 13:30>単なる(一般的に言われる)男女差に還元できてしまうような気がしてきました。
そうなんですよね。引用部分の書き込みにしても、
「議論に慣れてるもんだから相手の気持ちを無視した批判ができちゃう男」と
「人の好きなものをいきなり批判してくる相手が信じられない女」が
正面衝突してしまうという、ありふれた光景のように感じましたし。
↑こういう定型的な男女像に当てはめるのもアレなんでしょうけど(笑)。
Posted by: いずみの at 2004年08月01日 13:43私も腐女子の一人ではありますが、腐女子の目から見ても大体そんなもんですよ……
Posted by: アミ at 2004年08月02日 01:05アミさま
コメントどうもです~。やっぱりこの場合、男女差であれこれ言うのは性急すぎたですね。
言及して頂いた仮藻録さん
http://youkan.s31.xrea.com/d/200408_1.html#01_t1
や萌え萌えアニメ日記さん
http://www.asahi-net.or.jp/~RG8S-SZK/hobby/NIKKI/2004/200408.html#2455_7
のご指摘や、
>男か女かじゃなくてガキかどうかって話だぞ
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1089467186/161
というレスに尽きると思います。お騒がせしました。
言い訳すると、徹夜飲み明けのままずっと起きてて、思考力や判断力が低下していたので……。思いつきが第三者の手を経ることなくそのまま書けてしまう場はやっぱり怖いなあ、と痛感。こういう時には更新すべきでない、って何度か過去に反省したはずなんですが。
Posted by: fuku at 2004年08月02日 01:24doofratsさんの「売られた喧嘩を買ってみる」
http://d.hatena.ne.jp/doofrats/20040801
の男女問題についての指摘には、ぐうの音も出ないというか、全面的にうなずくしかありません。さらに精進致します。
ただ、「『ダメなものに入れあげる自分』という自意識」 を、「肯定」しているわけではなくて、おたくのメンタリティーとして、自分のことを考えてもそういう面は確かにあるなあ、と感じたということです。そのこと自体の善し悪しを論じているのではなく、まして「二次元の世界での夢は、いつかは現実にフィードバックされる」ことを否定しているのでもありません。むしろ、両者の気持ちがが併存しているのがおたくのあり方のような気もします。
Posted by: fuku at 2004年08月02日 03:54ああ、そういう意識でいらっしゃるなら。
ただ、上で(福)さんの書いておられる腐女子一般に関する指摘が当たってるからこそ、それに疑問を感じている「萌えオタ」寄りの女子もいることを知っておいていただきたくて。同じオタクどうしなんだから、「分ける」方向ではなく「共存」を目指したいと常々思っているので、ああいう喧嘩腰にしてみました。(「モテない」は怒るとこですよ。なんか毒を抜かれてしまいましたね。)
というわけで、一般大衆をどんどん啓蒙してってください。それができる権力者なんですから!腐女子だってあなたに期待してるんですよ。
Posted by: doofrats at 2004年08月02日 09:00doofratsさま
お越し頂きありがとうございます。いえ、モテないのは厳然たる事実ですので、怒っても仕方ないというか。
繰り返しになりますが、私の感じたことは男女差というよりは、「大人」か「子供」か――という言い方に語弊があるなら「スレてる」か「純粋」か――ということなんでしょうね。
「『共存』を目指したい」というのは全く同感です。今回、自分の理解の浅さ、そして理解の浅い自分への無自覚をいやというほど思い知らされましたので、さらに見聞を広めていきたいと思います。
気楽に書けてしまう場だからこそ筆も滑りがちなる反面、開かれたネット上にある場だからこそダイレクトな反応も期待できるわけで。今回のように多くの方からご指摘、ご叱責頂けるのは、冷笑や無視よりどれほどありがたいことか。
>あの程度の見識で記事書いて給料もらえるのならすげー楽だよな。
http://comic5.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1089467186/164
なんて言われてしまう人間でも、自分の思ってる以上に影響力は大きいんだということは、改めて肝に銘じなければと思います。特に、本業の場で同じ轍を踏まないように。
そうですかね?。わたしは福さんが恐縮する必要も無いと思ってますが。
「あの程度の見識で記事書いて給料もらえるのならすげー楽だよな。」
とか言う人がいるのであれば,じゃぁ自分もそういう立場になってみろよ,って思ったりします。そりゃ思いつきで,文章を書いて影響が大きい人もいますが,そういう人はそれまでそういう立場に立つために,いろんな努力をしているわけで,ネットにアクセスできるだけで好き勝手なことを言ってるに人とは比べられないのだと思ってます。
というわけで,そんなに気にする必要ない気がします。
腐女子の議論はたしかに一般化には飛躍がありますが,思考実験としてはおもしろいのではないのでしょうか?。例外を挙げて議論をやめてしまうのは簡単ですが,男女(というよりコミュニティ)の傾向の違いの検討を辞めちゃうのはもったいない気がします。
Posted by: taro-r at 2004年08月02日 20:48taro-rさま
温かいご意見ありがとうございます。「あの程度の~」は、2ちゃんねるのレスという前提で受け止めてますから、そんなに気にしているわけではないのでご心配なく。
>男女(というよりコミュニティ)の傾向の違いの検討を辞めちゃうのはもったいない
というのもおっしゃる通りだとは思いますが、今回に関しては、私の方が「例外を挙げて議論を」始めてしまったきらいもありますので。デリケートな問題だけに、やるなら改めて慎重に扱わねば、と。
もっとも、加野瀬さんもおっしゃる
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20040801#moefujyo
ように、男女差よりは年齢で考えた方が良さげな感じもしますね。改めて。
こちらでは初めまして。過ぎた話題に今さらですが……。
1)オタクがダメなものを志向するという森川理論は、論証にいろいろと疑問がある(そもそもエヴァがヒットしたのは、カッコよかったからでしょ?)。それに安易に依拠するのはどうか。
2)キャラクターと作品(あるいはお話、設定etc)を別々に楽しめるような(福)さんこそ、奇妙とは考えないのか。
の2点が気になりました。
というか、(福)さん「萌え」を絶対視しすぎ!
……本当に今さらですみません。
Posted by: 小川びい at 2004年08月06日 16:27>小川びい様
キャラクターと作品(あるいはお話、設定etc)を別々に楽しんで鑑賞するのは全然奇妙じゃないですよ。
映画や演劇などでよく「話はヘボいけど出演俳優の存在感に圧倒される」という批評家のレビューを聞きますし、また故・淀川長治氏は「どんな駄作でも、何か一つは良い所がある」と、些細な箇所であっても“ここはイイ!”と思える所を見つけ出す鑑賞姿勢を貫いていました。
こういった先例からも、“全体的には今イチと自分でも思いつつも、その中に一つでも好みな要素が盛り込まれていたなら、そこだけ楽しみに見る”というのは至極普通の鑑賞姿勢と思います。
「萌え」を絶対視しすぎ、と仰いましたが、それは(福)様の“鑑賞姿勢”とする大前提なので、当然のことです。ピーコ氏が以前「ファッション」の面から映画を見ていたように、(福)様は「萌え」の面からアニメを見ている、と言うことです。
Posted by: 香港之悪 at 2004年08月07日 03:17>香港之悪さま
>キャラクターと作品(あるいはお話、設定etc)を別々に楽しんで鑑賞するのは全然奇妙じゃないですよ。
あら、そうですか? 香港之悪さんが上げられた例はどれも「よかった探し」で、「鑑賞」からはほど遠いように僕には思えるのですが……。
まあ、僕の考えはともかく、作品を一体として楽しむこともあれば、その一部を取り出して愛でるやり方もある、ということに異論はないですよね?
とすれば、今回の(福)さんは、「萌え」(≒キャラクターを作品と切り離せるという立場)を絶対視して、それ以外の立場に理解が及ばなかった点で(そのことはすでに十分自覚されているようですが)、いささか勇み足だったのではないか、という話なのです。
ほんとに今さらですね。すみません。
Posted by: 小川びい at 2004年08月07日 04:30小川びいさま、こんな所までお越し頂きありがとうございます。先日はいろいろお世話になりました。そして香港之悪さま、私の気持ちを代弁して頂きどうもです。
ただ、私はこの場では「萌え」の面からアニメを見る態度を選択していることが多いですが、それだけではないつもりだし(うそ、って突っ込まれそうだけど)、それ以外の鑑賞態度を否定するものでもありません。
今回の書き方はその辺の配慮が足りなかった――自分からは相手が奇妙に見えるのと同様、相手からは自分が奇妙に見えるのかもしれない――ということで、びいさんの「『萌え』を絶対視しすぎ」、という突っ込みは素直に受け止めたいと思います。
で、もう一点についてですが、森川氏の論の当否についてはともかく(私はやはり支持しますが)、「ダメかダメじゃないか」と「カッコいいかカッコよくないか」というのは必ずしも連動しないのでは、と。
「エヴァ」に関しては、「カッコいいけど根っこはダメ」だったからこそおたくに受け入れられ、一般層にまで広がったのは、その「カッコよさ」が尋常ではなかったから、なのではないかと思います。
Posted by: fuku at 2004年08月07日 18:35ご理解いただき、ありがとうございます。こちらこそ言葉足らずでもうしわけありませんでした。
森川理論については、改めていつかお話できればと思います。ただ、ひとつだけ――
>「エヴァ」に関しては、「カッコいいけど根っこはダメ」だった
これだけは「絶対に」違います。ダメというのが何を指すのかはよくわかりませんが、少なくともリアルタイムで視聴し、過熱する状況を見ていたならば、そんな感想は出てこないかと思います。本当に純粋に引き込まれハラハラドキドキし、アレコレ考えながら、みんな見ていたのですよ。
Posted by: 小川びい at 2004年08月09日 12:38う~む。それはおっしゃるように、「ダメ」という言葉の使い方の違いだと思います。
ここで言う「ダメ」とは、質の良し悪し、面白いか否かという話ではなく、世間的に評価されない、という意味での「ダメ」ということです。「いい年してアニメを見て」、みたいな。その「ダメ」なアニメが、一般層も認めざるを得ないほどハイレベルな作品たりうるのだと、鮮烈に示してくれたのが「エヴァ」という作品だと思います。
Posted by: fuku at 2004年08月09日 21:58もう止めると言いながら、すみません。
>世間的に評価されない、という意味での「ダメ」ということです
ふーむ。それだと、森川さんが使っている用法とは少なからずズレがあるようですね。直接、森川さんの説明をきいた限りでは、fukuさんがおっしゃるような、「世間的に価値が低いものに積極的に意味を見いだす」といった用法ではありませんでしたが……。
……もう、やめます。すみません。
Posted by: 小川びい at 2004年08月10日 00:46なるほど。本文で触れた森川氏の文を読んだ範囲では、私はそのような感じに捉えたのですが……。まあ、いずれにせよぜひまた機会を設けて、その辺りについてもお話しさせて頂きたいものです。
Posted by: fuku at 2004年08月10日 02:15いやぁ、感服しました・・・・・
この場合の『楽しみ方』というのは、いわゆる『考え方』もっというと『思想』という風になると思います。
やはり、個人として物事を考えなくてはいけないといけないと思います。こういう『価値観』も、個人の中で生まれ、それを平等な立場で行える言論の場において、集団的価値観が生まれる、と思います。ただ多数派が少数派を飲み込むだけではだめなのです。もし、『萌えオタ』や『腐女子』(それ以外においても)(つか、これを一番やってほしいのは政府なのですが)の中で、ある集団的価値観を生成するのであれば、じっくり時間をかけ、その中の、あるいは部外者の人間にも制限が加えられないよう物を造ることです。これは、誰も制限されません。そんなことを言ったら、『意味ないじゃないじゃないか』といわれそうですが、アピールには十分です。ある意味、こういうのはアピールのためにあるのかもしれません。大事なのは、それに対して、反論する余地を与えるということです。(まぁ、ある意味これも『思想の自由』でありまして・・・・)
しかし、よく考えてみると、『自分の価値観に合わないからって否定するのはアニメファンとしてどうかと思う。』というのも一種の価値観なので、否定はできません。むずかしいところです。
というか、これだけすごい文を作ったfukiさんに感服しますた。