2003年08月05日

「明日のナージャ」第26話

細田守氏の演出回。自分にとっては問題作というか、衝撃的な内容でした。視聴後感は言葉で表現しにくいのですが、心がざわめきたったというか。以下、ストーリー面と演出面に分けて書きます。

まずストーリー面。ナージャが最初に好きになったのは黒バラだったということが、はっきりと明かされましたね。ナージャが偶然出会った、フランシスと思い込んでいる黒バラが、ナージャのブローチに言及する――「このブローチは決して手放してはいけない」――ことで、第1話で初めて会った「星の瞳のナイト」が実は黒バラであった、と。後に舞踏会で会ったフランシスは本当は別人なのに、スイスでキスにまで及んでしまったわけですね。

最後に、ナージャは本物のフランシスを見かけ――二人ともグラナダにいるという偶然はさておき――、今までフランシスだと思っていた人物が黒バラだったと悟ります。混乱の中に投げ込まれたナージャは、直前に発した「私、今日のあなたが好き。前よりずっと好き」という言葉を、また違った意味で反芻していたのでしょう。

ここで話を終えてしまうというのも衝撃でしたが、一方で、「ナージャ」の新しい魅力を引き出していたようにも思いました。一体ナージャは、黒バラとフランシスのどちらを選ぶのか――。フランシスが女性と一緒にいたというのも、今後の波乱を予感させます。

次に演出面。シンメトリーの多用など、細田氏らしいレイアウトが随所に見られ、緊張感、あるいは奥行きのある画面構成は、やはり格が違うと感じました。気になったシーンをいちいち挙げていったらきりがありませんが、とりわけ、ナージャと黒バラがキスに至るシーンの、正像と鏡像の巧みな使い分けには脱帽しました。

とにかく、ナージャがよくしゃべり、よくはしゃぎ、よく踊る、明るく元気な女の子として描かれているのが印象的でした。最初に「黒バラ」と聞いてパンチを繰り出すシーンは、黒バラに不本意なキスをされた第19話を連想させて面白かったですし。山内重保氏演出の名作・第8話にも通ずる描き方で、本来、ナージャのキャラクターはこれくらい立ててしかるべきなのではないか、という感じもします。

人っ子一人いない強い日差しの中、二人だけの世界はまるで白昼夢のようでしたし、夕方の雑踏の中――あの群衆もあまりにもきちんと描かれていて驚きました――、一人取り残されて孤独を感じるナージャとの対比が際立っていました。

ナージャの「二つのこといっぺんにやるの得意なんです」というせりふは、同じく細田氏演出の「おジャ魔女どれみドッカ~ン!」第40話のどれみのせりふ「あたし、昔から二つのこといっぺんにやるの苦手なんだ」と対比させられているのでしょう――「どれみ」と「ナージャ」は違う――し、「(ダンデライオン)一座に加わってから、知らない町で知り合いにばったりとか、かなりすごい偶然結構ありますけど」というせりふは、作品への皮肉のようにも受け取れます。

こうして見ていくと、実は細田氏は「ナージャ」という作品に、一種のいらだちみたいなものを抱いていたのではないか、という気もします。演出として参加するのはこれで最後だということですので、自分なりの「ナージャ」とはこういうものだ、ということを今回で示したかったのではないでしょうか。

こんなことを言っても詮無いですし、言うべきでもないのかもしれませんが、細田氏がシリーズディレクターを務めた「ナージャ」も見てみたかったように思います。

次回はケンノスケの話のようで、妹(?)との生き別れなどを想像させる予告でとても楽しみなのですが、こういう、各キャラクターを掘り下げる話は、もっと早い時期に――例えばケンノスケが一座に加わった時点で――やるべきだったのではないか、とも感じます。初期のころの感想にも書いていますが。

Posted by fuku at 03:43 | nadja | トラックバック (0)
コメント

はじめまして。
今日(8日)の読売夕刊、拝見しました。

他の掲示板でも書いているのですが、細田守氏は東映アニメーションを出て行かないと天下を取れないと思います。
潰れた虫プロの残党がサンライズを作って『機動戦士ガンダム』を当てたように。映画を作るために出来たGAINAXが、やがて『新世紀エヴァンゲリオン』をヒットさせたように。そして東映を出て行った宮崎駿氏が、スタジオジブリで“世界のミヤザキ”になったように。
細田氏も自分が作りたいアニメを、自分のスタジオで作るべきです。老舗では冒険は出来ません。現在、東映が手掛けているアニメのほとんどが原作物であることをみれば推して知るべしです。

気が向いたらまた書きます。

追記。
アドレス書かないと登録できない。“無銘”なのに本名バレバレ(w

Posted by: 無銘 at 2003年08月08日 16:36

>細田守氏は東映アニメーションを出て行かないと天下を取れないと思います。
ん~、こればっかりは何とも言えませんねえ。作りたいものが作れるんだったら、それはどこで作ってもいいんでしょうし。東映アニメーションさんだって、細田さんが自分のところのエースだという認識は持っているはずなので、せっかくの才能をみすみす逸するという選択はしないでしょうし。
とりあえず、これぞっていう作品を一本、東映で作ってほしいですね。その先のことは、それからでもいいかなと思いますが。

アドレスは、ダミーで適当に入れても大丈夫かと思いますが。まあ、匿名でメッセージがあったら2ちゃんねるのスレへどうぞ。
http://comic2.2ch.net/test/read.cgi/asaloon/1056399887/l50
大体チェックはしてますので。それとも、掲示板みたいのを自前で置いた方がいいのかなあ。

Posted by: fuku at 2003年08月09日 02:47
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